2017/04
≪03  1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30   05≫
日本語のエッセンス(21)「すごい(×)多い」「すごい(×)好きだ」と言う日本人
20160402_152109 1200x
(*写真:群れて賑々しく咲き誇るよりも、ただひとり凛と咲くのが心の琴線に触れる。人も言葉も同じだろう)


日本語のエッセンス(21)「すごい(×)多い」「すごい(×)好きだ」と言う日本人

 

日本語学習者からの質問】

友達の日本人が「すごい多い」とか「すごい好きだ」とか言います。「すごく多い」「すごく好きだ」じゃないでしょうか?

 

アリシアさん、こんにちは。

確かに現代日本人は「すごい」を多用しますね。昔から日本人は聞き手の興味を引くためにいろいろ表現を使ってきました。現代日本人は「とても~」「大変~」あるいは「超(チョー)~」などの言葉を使って、何とか聞き手を惹きつける大げさな表現をしようとしてきました。「程度が甚(はなは)だしい」という意味を持つ「すごい」もその一つです。

 

ところが、アリシアさんが指摘するように「すごい」はイ形容詞(国文法では形容詞)で活用があります。結論から言いますと、アリシアさんの言う通り、この場合は「【すごく】多い」「【すごく】好きだ」が適切な日本語表現ですね。

 

では、なぜ最近の日本人は「すごく」を使わないのか、あるいは、使えないのか?

「とても~」や「大変~」は書き言葉的なので、これらの副詞の意味に近い話し言葉を探すと「すごく~」という表現があります。

 

この「すごく」は副詞ではなくイ形容詞の「すごい」の連用形(動詞・イ形容詞・ナ形容詞=形容動詞に係る形)です。「すごく多い(イ形容詞に係る)」「すごく好きだ(ナ形容詞に係る)」と使えば問題ないのですが、この場合の「すごく」を多くの現代日本人が「すごい」で済ませてしまっている点が問題なのです。

 

この傾向は年代や性別に関係なく、ほとんど現代日本人に満遍なく広まってしまっています。この誤用の言い訳はいろいろできそうですが、端的に言えば不注意なだけです。

 

「ラ抜き言葉」には受身形と可能形の区別を明瞭にする、という動機がありますが、この「活用しないスゴイ」の安易な使用には言い訳が難しいでしょう。日本語母語者として怠惰な発話の結果です。日本人としては自らへの戒めも込めて厳しい自己評価をすべきですね。

 

イ形容詞「すごい」は「すごく-ない」「すごく-多い」「すごい。(終止)」「すごい-人(名詞にかかる)」「すごけれ-ば」のように活用変化します。ところが、最近の日本人は「すごく」とすべきところを活用させず「すごい」を「とても」「大変」と同じ、まるで副詞として連発するのです。

 

もっとも「形容詞に活用がある!」日本語に驚く外国人には、あまり不思議でない現象かも知れません。

 

このように「すごい」を活用させずに「とても」や「大変」の意味で使うと、次のような問題が生じます。

 

例えば「すごい人が多い。」という文では、「すごい」は名詞「人」にかかって「【すごい人】が多い」となります。つまり「並外(なみはず)れた人」が多くいる、という意味になります。

 

しかし、この「【すごい】人が多い」を「【すごく】人が多い」つまり「人が【すごく】多い」の意味で使っている日本人が多くなっているのです。これではイ形容詞「すごい」の活用を無視していることになります。

 

しかしこの現象は、文法的な間違い、以上に、「すごい」を安易に多用する現代日本人の日本語力、語彙の貧困さ、が問われていると思わざるを得ないのです。かつて若者言葉として流行った「超(チョー)~」は、やはり流行言葉の域(いき)を出ず、話し言葉とは言え、大人は使いにくい。そこで間投詞的にも使われている「すごい」が使われたようです。

 

「超」と同様に、聞き手の注意を引こうと、大げさな表現を使いたい、という話し手の願望が、「すごい」を活用させず、間投詞そのままの感じを使っているのです。言わば、「おお!」とか「ええ!」、場合によっては「!」の代わりに「すごい」が使われているということです。

 

英語などの外国語で話さなければならないときは、日本人は文法的に正確な使い方を意識しますが、母語である日本語にはそれほど注意を払わないのかもしれません。それに加えて日本の学校教育では日本語は一言語としてきちんと教えられていない現状も、こうした誤用につながっているのかもしれません。

 

言葉は時代とともに変わる、とは言え、「すごい」の「無活用使用」はイ形容詞「すごい」の存在をも無視することになり、副詞として使っている、と言い訳はできないでしょう。

 

「すごくない」」が「【すこい】ない」」、「すごければ」が「【すごい】ければ」とはならないことや、「すばらしく美しい」のイ形容詞「すばらしい」が活用せずに「【すばらしい】美しい」とはならないのを見ても、「すごい」の活用を無視することは誤用の謗(そし)りをまぬかれない、と思います。

 

年代を問わず多くの日本人が「すごい」を「すごく」と活用せずに使っている中で、年齢は若くてもフィギュアスケートの浅田真央選手や卓球の福原愛選手など、国際的に活躍しているスポーツ選手は、「すごく嬉しいです」のように的確に使っています。海外でも大勢の人の前でコメントを出さなければならない経験を通して、的確で誤解の無いメッセージを発する心構えが出来てくるのでしょうね。

 

外国人に指摘される間違いをしっかりと受け止めて、日本人は母語である日本語を一言語として敬意をもって、外国語を話す時と同様に注意を払って話したいものです。




<↓クリックすると関係ブログが見られます>

にほんブログ村 旅行ブログ スペイン旅行へ にほんブログ村 旅行ブログ 中南米旅行へ にほんブログ村 教育ブログ 日本語教育へ

関連記事
スポンサーサイト

tag : 日本語 日本語教育 国語 すごい すごく

 
Secret
(非公開コメント受付中)

バルセロナの情報&コミュニティサイト「バルセロナ生活」
Living in Barcelona, Spain 世界各国/地域に1サイトのみの海外日本人向けのサイトのバルセロナ版です。 読者による投稿型サイトなので、皆さんの投稿で出来上がっていきます。
最近の記事
カテゴリー
プロフィール

黛 周一郎Shuichiro Mayuzumi

Author:黛 周一郎Shuichiro Mayuzumi
Centro de japonés
NAKAMA-ASOCIACIÓN PARA EL FOMENTO DEL INTERCAMBIO CULTURAL HispanoJaponés

FC2掲示板
FC2カウンター
連載「バルセロナの侍」「スペイン語を一か月でものにする方法」など
①小説「バルセロナの侍」 ②言語習得「スペイン語を一か月でものにする方法」 ③旅行記「ガラタ橋に陽が落ちる~旅の残像」 ④エッセイ「人生を3倍楽しむ方法 - なぜ日本を出ないのか」 を連載しています。
にほんブログ村
<↓クリックすると関係ブログが見られます>
にほんブログ村 教育ブログ 日本語教育へ
にほんブログ村 旅行ブログ スペイン旅行へ
にほんブログ村 旅行ブログ 中南米旅行へ
にほんブログ村 教育ブログへ
にほんブログ村 旅行ブログへ
人気ブログランキング
PC2ブログランキング
FC2 Blog Ranking

FC2Blog Ranking

ブログ王
QRコード☛このブログのアドレスをケータイやスマホでメモできます。
QR
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Publicación 出版著書 La esencia del Japonés
     ”La esencia del Japonés'      - Aprender japonés sin profesor     『日本語のエッセンス』ーひとりでまなぶにほんごー                    ↓
ブログ内検索
ブログ内記事リスト&リンク
By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ