2017/06
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日本語のエッセンス(14)「日本語」の教育のために

(写真:人種、年齢を越え、世界中で日本語が学ばれている。日本人もうかうかしていられないね)




日本語のエッセンス(14)「日本語」の教育のために

 

日本語教育国語教育の両方に携わってきた経験から、それぞれがより良い方向に進むために何が必要なのか、折々にメモしてきたものを、まとめてみました。

 

日本語教育は自分の頭の重さに項垂れている。

日本語教育関係の研修会に参加するたびに、割り切れない思いがする。私はスペインとメキシコ在住中の20数年間、スペイン、メキシコを初め、ヨーロッパやカナダそして日本で行われた研修会やシンポジウムに参加してきたが、相も変わらず、どこどこ大学の有名教授のお話をアリガタクお伺いする、というのが定番である。

 

これではいつまで経っても日本語教育と日本語教師の実質的向上は難しい。論文の本数や

研究大会での発表数をかせぐ研究者の大学内での地位確保には大いに貢献するが、世界各国の小さな現場で奮闘し苦悩している日本語教師たちの授業実践の向上に貢献しているかどうかは、大いに疑問がある。

 

日本語教育の研修会、シンポジウム、勉強会には、公開授業が中心にならなければならない。現場の教師が授業を公開し合う研修会こそ、いま日本語教育に必要なのだと思う。但し、経験の少ない教員の授業をベテランの教師が見て、あれこれ重箱の隅を突付くような授業公開では、本末転倒である。

 

経験の豊かなベテラン教師が現場で苦悩している教師たちに自分たちの授業経験を役立ててもらおう、という意識が育ち実践されなければ、日本語教育全体のレベルの向上が望めないどころか、「日本語教育なんて日本人なら誰でもできる」とか、対価を得る職業としてではなく「ボランティアでやるべきだ」という社会的イメージが固定され、職業としての日本語教育の成立そのものが危うくなるのではないだろうか。

 

このことは、日本語教育が日本の国策としてどのように位置づけられているかを見れば、決して杞憂とは言えまい。

 

私は日本語教育とともに、日本とメキシコでは15年ほど国語教育にも携わってきた。ときには両方の教育を併行して実践して来た。

その一方の国語教育にも問題がないわけではない。

 

国語教育は、学習者の母語が日本語であることを前提に、読む・書く・話す・聞く、の言語の四技能と言語感覚の育成を目的として掲げている。すなわち、国語教育言語教育であるはずである。しかし、実際は、文学的な教材を「読む」ことに重点が置かれてきて、世界における一言語としての日本語をほとんど教えていない現実を現場で経験してきた。

 

率直に言って、日本の国語教育の中では「言語としての日本語」を日本の生徒・学生たちに体系的にきちんと教えるシステムが欠けている。これでは日本人が日本語を適切にコミュニケーションに使えるようになるとは、到底望めないのであるまいか。

 

一方、日本語教育は、学習者の母語が日本語ではないことを前提に、特に、「話す」ことと「聞く」こと、すなわち「会話」に重点が置かれてきた。

 

従来の定義からすると、日本語を母語としない主に成人のための第二言語教育が日本語教育であるならば、国語教育とは日本語を母語とする言語形成期の児童・生徒のための日本語の教育、と言える。

 

しかし、実際の国語教育を見ると、むしろ母語教育の周辺である文学解釈や文学鑑賞に大部分を費やしている。こうした国語教育の在り方は、今日、国語教育の現場における帰国児童・生徒や外国籍児童・生徒等の増加によって、「国語教育に日本語教育が参戦」せざるを得ない状況に変わりつつある。

 

また、日本語教育の現場においても、欧米語を規範とする言語学の理論に振り回され、日本語の本質を置き去りにしていく傾向が危惧される。従って、第二言語教育としての日本語教育の現場もまた、国語学・国語教育で積み重ねられてきた日本語についての知恵に学ぶ姿勢が求められることになる。

 

国語教育と日本語教育が互いの共通点と相違点を認識しつつ、より強い連携意識を持ち、互いに謙虚に学びあう時機を失ってはなるまい。その時機がすでに到来しているという双方の関係者の自覚が、双方の分野を発展させ豊かに成熟させていく前提となるだろう。

 

欧米言語の研究成果を振りかざし日本語の外壁をなぞっている感が否めない日本語教育は自分の頭の重さに項垂(うなだ)れ、日本語を「世界の中の一言語」という地平に置こうとしているとは言えない国語教育はその視野の狭さに躓(つまず)いている、と思えてならない。

 

日本語教育と国語教育、この両者における「日本語」の教育を健全な方向に進めるためには、「日本語そのものの自律性」と「世界の中の一言語としての日本語」を同時に見据えることのできる道を、日本語を教える教師たちは敢然と、そして粛々(しゅくしゅく)と歩むしかない。



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