2017/06
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日本語のエッセンス(13)「東京に(×行け【ば】/〇行っ【たら】/〇行く【なら】/×行く【と】)、電話して下さい」を考える

(*写真:バルセロナのおみやげ屋を覗くと日本出身者も頑張ってぶら下がっていました)


日本語のエッセンス(13)「東京に(×行け【/〇行っ【たら/〇行く【なら】/×行く【と】)、電話して下さい」を考える

 

日本語の「if」、つまり「仮定法」と言われているものが日本語では「/なら/たら/と」と4つもある。これらの仮定法にはどんな関係があるのだろうか。

 

日本語母語者は無意識のうちに使い分けているが、それらの働きのメカニズムは一体どうなっているのだろうか。

 

イフ(if)君がカテイ(仮定)君にいろいろ質問しているので、ちょっと耳を澄ませてみる。

 

《イフ君》:いやあ、考えてみると奇妙だし、面倒だね。日本語には仮定法がどうしてこんなにあるんだろう? 一つで良いと思うんだけど。

 

《カテイ君》: まあ、見かけは面倒に見えるけど、その元をたどれ、意外と難しくないし、寧ろ論理的な構造になっているんだ。

 

じつは「たらなら」形は基本的には一つだ。

と言うのは、「たら」も「なら」も「」形としてまとめることができるんだ。

・もし、そんなことが起こっ【たら】、大変なことになる。

とか

・病気【ならば】病気と言ってくれ。

のように言っているのを聞いたことがあるだろ?

 

つまり、「たら」や「なら」は「たらば」「ならば」の「ば」の取れた形だと考えればいいんだ。

このように見れば「たら」形も「なら」形も結局は「【ば】形のバリエーション」に過ぎない、ということだ。

これらと「と」との関係についてはまた後で言うことにしよう。

 

《イフ君》: じゃ「なら」「たら」の正体が分かれば、それに「ば」が付いていると考えればいいんだね?

 

《カテイ君》: そうだね。まず「たら」について言うと、これは文語文法で出てくる「完了」の「たり」の未然形がそのまま残っていて、この「未然形」(日本語教育では「ない形」)というところが、日本語の仮定法の肝要なんだ。

 

《イフ君》:(文語文法の教科書を引っ張り出してきて)この表だよね。未然・連用・終止・連体・已然・命令。あれ、仮定形ってなかったっけ。

 

《カテイ君》:文語文法の已然形の枠が口語文法では仮定形になっているんだ。

文語では仮定法の「行かば」(未然形+ば)が口語では「行けば」(已然形+ば)に変わったので、文語文法の「已然形」の枠が口語文法では「仮定形」に変わったんだね。

 

《イフ君》:なるほどね。じゃ、もう一つの仮定法の「なら」の正体は?

 

《カテイ君》:「なら」は文語「断定・確定」の未然形だ。つまり、「なら(ば)」も「未然形(+ば)」の形が見えてくるだろう?もう大体気づいたと思うけれど、「未然」は「未(いま)だ然(しか)らず」だから「まだ実現されていない」ことを表す活用形なんだ。そして「ば」は「仮定法の目印」だ。両方合わせて「仮定表現」が実現する、ということだけど、「たら」と同様、目印「ば」がなくても仮定法の働きをすると考えればいい。

 

《イフ君》:これまでの君の仮定法の説明を俺なりにまとめると、

一つ目は「未然形+ば」だったが、現代語では「仮定形+【ば】」の形(例えば「行けば」)。




二つ目は「完了(動作・作用が終了していること)の未然形【たら】(+ば)」。




三つ目は「確定(事実または確実であること)の未然形【なら】(+ば)」

というわけだね。




でも、これだけではそれぞれの仮定法の意味的な違いが分からないんじゃないか?。

 

《カテイ君》:それじゃ、「ば」「たら」「なら」形の文例を挙げて、それぞれの性格を見てみよう。

1・東京に行け【ば】、(×電話して下さい / 〇電話しなければならない)

2・東京に行っ【たら】(ば)、(〇電話して下さい / 〇電話しなければならない)

3・東京に行く【なら】(ば)、(〇電話して下さい / 〇電話しなければならない)

 

「前節+ば、後節」の型の文例1を見ると、「たら」も「なら」も持たない「ば」形は「(前節)であれば「当然(後節の内容)という結果になる」という意味になる、ことが分かるね。「ば」形の仮定法は前節には何ら話し手の意思が入っていない。したがってその前節を受ける後節にも意思的な要素は入りにくい。だから、「電話して下さい」のような「依頼」が後節に来ると違和感を示すんだ。

 

「前節+たら(ば)、後節」の型の文例2、いわゆる「たら」形は、「完了」の意味が加味されるから、前節の行為が「完了したものと仮定」して後節に続くかたちになる。ここには「完了」と見なす「話し手の意思」が入り込んで、後節にもそれが影響して意思が入り込むことができ、「電話して下さい」という「依頼」表現も可能になるんだ。

 

また、「前節+なら(ば)、後節」の型の文例3、いわゆる「なら」形は、「断定・確定」の意味が加味されるから、前節の行為が「確定されたものと仮定」して後節に続くかたちになる。「なら」形の場合には「確定」と見なす「話し手の意思」が入り込んで、「たら」形と同様に、後節にもそれが影響して意思が入り込むことができ、「電話して下さい」という「依頼」表現も可能になるんだ。

 

ここで注意して欲しいのは、「たら」(完了)形の場合は「東京についてから電話して下さい」の意味だけど、「なら」(確定)形の場合は「東京に行く前に電話して下さい」の意味になることだ。

 

《イフ君》:なるほどね。だんだん分かってきた。

「ば」「たら」「なら」については大体分かった。残るは「と」だね。

 

《カテイ君》:「と」形は「条件Aのもとでは必ずBが起こる」という「原因と結果の強い必然性」の場合に使われているんだ。例えば

・(君が)東京に行く【と】、彼女が困る。

のようにね。

 

ところが、この文だと「と」は次のように「ば」に替えられる。

・(君が)東京に行け【ば】、彼女が困る。


ただ「と」は「ば」よりも「前節の後節の必然性」が強いので、「ば」形の仮定法で使える次のような「許容」の意思性も受け付けない、という違いがあるんだ。

・東京に行け【ば】、君を許してもいい。→0

・東京に行く【と】、君を許してもいい。→×

 

こうした「と」の性格は、次に示すような「過去の客観的叙述」に、より典型的に現れている。

・窓を開ける【と】、外は雪だった。

これは、条件Aのもとで「継起」(引き続き起こる)する事実Bの叙述、ということだ。

 

「と」は本質的には、この「継起」の働きを持つものだ。この性格が仮定のように見えるだけなのさ。

 

 (イフ君とカテイ君の対話を終えて)

さて、日本語の「if」、すなわち「仮定法」は、元を正せば「ば」形のひとつであることや、その「ば」形のバリエーションである「たら」「なら」形や異分野から参入した「と」形との違いも、ざっとだが、確認してきた。

 

「東京に行け【ば】、電話して下さい」が非文になる事情をちょっと覗いてみたら、思いがけず、日本語の「律儀(りちぎ)さ」に出会い、こちらも自然、会釈を返してしまう。

 

日本語が曖昧(あいまい)な言語だと言うのは見当違いの話で、世界でも使用者数の多い英語やスペイン語と比べてもまことに「律儀」(義理がたく実直なこと)で微妙な意味合いが使い分けられる言語だということが、仮定法ひとつ取ってみても分かる。

 

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