2017/08
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日本語のエッセンス(8)「彼が走っている(○の)(×こと)を見た(○こと)(×の)がない」を考える





日本語エッセンス(8)「彼が走っている(○)(×こと)を見た(○こと)(×)がない」を考える

 

」「ことについて日本語学習者から次ような質問があった。

1.外国人に対し日本語で話す【こと】が難しいです。

2.外国人に対し日本語で話す【の】が難しいです。 

の【こと】と【の】の使い方の違いについて教えてください。

 

この文例での違いを分析する前に、「こと」「の」の違いの根底にあるものを解決しながら考えていこう。

 

まず、次の例を考えてみる。

A・それを言う(×こと / 〇の)は今だ。

B・言いたい(〇こと / ×の)は山ほどある。

 

上の文例Aの「の」は「言う」という「行為」を単に名詞化しているだけで、言う内容には関わっていない。

 

一方、文例Bの「こと」は「(言う)内容」を暗示しているので、単純名詞化の「の」は使えない。

「こと」「の」の性格をもう少し、細かに見てみる。

 

*「こと」が使えないケース

(1)具体的に他の形式名詞や名詞に置き換えられる場合。 

・あの赤い(×こと / 〇の=もの)は何ですか?

・遅刻した(×こと / 〇の=原因・理由)は事故があったからです。

・父がいなくなった(×こと / 〇の=時期)は3月です。

 

(2)視覚(見る)、聴覚(聞く)に関する動詞が続く場合。

・彼が走る(×こと / 〇の)を見た。

・電話が鳴る(×こと / 〇の)を聞いた。

 

*「の」が使えないケース

・悪いことをすれば、すぐばれる。→「抽象的・一般的性格」と「内容」を示す「こと」

・あの(〇こと=件 / ×の)は黙っていて欲しい。→「内容」を示す「こと」

 

したがって、「こと」「の」のどちらも使える場合は、そのとき使ったどちらかの性格を帯びた文になるわけである。

 

さて、冒頭の日本語学習者の質問に戻ろう。

この「の」「こと」を使った文例では、ニュアンスの違いがあるが、文としては「の」も「こと」も使えそうである。

 

冒頭に提示された文例は

1→1a.外国人に対し[ては]日本語で話すことが難しいです。

2→2b.外国人に対し[ては]日本語で話すのが難しいです。

または

1→1c.外国人に対し[て]日本語で話すこと[は]難しいです。

2→2d.外国人に対し[て]日本語で話すの[は]難しいです。

のどちらかの表現にしたほうが自然な日本語になる。

 

用言を受ける形式名詞「の」は「もの」「ひと」「こと」の意を表す、というのが国文法における一般的な説明だったが、現代日本語を外国語として観ると、「の」を形式名詞「こと」との比較において分析し、両者の特性を明確にする必要が生じて来た。ちょうどこの両者の違いについての質問があったので、具体的に示された例文で検討し、考えてみたいと思う。こういう点から少しずつでも現代日本語の文法を再検討して行きたいと考えている。

*

①≪英語を話す「こと」はおもしろい≫の形式名詞「こと」は、活用語の連体形を受けて名詞句を作り、その内容を「抽象的・一般的に考えられた概念(経験・習慣・必要・状態等)として示す」働きを持つ。

 

②≪英語を話す「の」はおもしろい≫の形式名詞「の」は、先行の活用語を名詞化し「その行為・状態を具体的・個別的な状況・実態として示す」働きを持っていると思われる。

 

したがって、

 

は ≪「一般的に」英語を話す「という経験・習慣」はおもしろい≫ということになり、

②は ≪「具体的に(例えば私が)」英語を話す「という行為の状況・実態」はおもしろい≫ということになる。

 

他の例文を挙げて検証してみる。

 

≪彼が走っている(×こと / ○の)を見た(○こと / ×の)がない≫

 

この文の「の」は彼が走っている具体的状況・実態を示し、「こと」は見るという行為を抽象的な経験という概念に置き換えて示している、と言えるだろう。

 

また、 

≪信じる「こと」はできる「こと」である≫≪早く起きる「こと」にしている≫≪泣く「こと」はないのに≫≪うまい「こと」やったね≫

 

などの「こと」は「の」に置き換えることはできなく、抽象的な概念としての内容を示している。

 

一方、≪読む「の」は問題ないが書く「の」はどうもね≫の「の」は「こと」に置き換えられるが、「こと」にすれば、より抽象的・一般的な色彩が強く感じられるのである。

 

「ことkoto」は「くちkuti」から出て、「言の端(koto no ha)」すなわち「言葉」となる。

その「言」葉によって「内容」を抽象し「一般化・概念化」して、「こと」すなわち「事」にするのである。

 

それに対して「の」は「私の本」の「本」が省略されて「私の」で示され、実質的に「の」が具体的な名詞・体言の役割を現すようになると、「彼が走っている(様子)」を「見た」を「彼が走っている【の】を見た」のように「具体的な行為」を名詞節としてまとめる能力、を発揮するようにもなった。

 

こうして日本語の「こと」と「の」は、

・彼が発表する「こと」は、この冊子にまとめられている。

(「こと」=言葉によって抽象化された「内容」)

・彼が発表する「の」は、明日だ。

(「の」=具体的「行為」)

のように、その差異化が確立されてきたのである。


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