2017/04
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日本語のエッセンス(3)なぜ「そんなバカなこと【×が】ない」と言えないのか?「は」VS「が」の本質
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日本語のエッセンス(3)なぜ「そんなバカなこと【×が】ない」と言えないのか?「は」VS「が」の本質

 

次の分は、どうして「が」がダメで「は」OKなのか、考えてみる。

A そんなバカなこと【が】ない ×

B そんなバカなこと【は】ない O


 

日本語の助詞「が」と「は」の使い分けは、日本語母語者は無意識にやっているが、日本語を母語としない日本語学習者にとっては、悩みの種である。

日本語母語者にしても、「が」と「は」の違いは、と訊かれたら、即座に納得いく説明ができる人は少ないだろう。日本の学校教育では教えられて来なかったからである。

ここでは、そうした非日本語母語者の立場に立って、この問題の本質を探ってみよう。


 

上に提示した文例を分析する前に、「が」と「は」の根本的な性格の違いを確認したい。

 

まず、次の文例で考えてみる。

A・私【は】田中です。

B・私【が】田中です。

 


文例
A「私【は】田中です」では、話し手が伝えたい最も重要なことは「私」でなく「田中」である。つまり、この場合の【は】は、【は】の後に来る述部「田中です」に聞き手の意識を引きつけ注目させる働きがあるのだ。この文は「(あなたは)佐藤さんですか?」と聞かれ、それを打ち消す形で「(いいえ、)私は田中です」と主張する場面が想定できる。

 


このように【は】は「述部を強く意識させる役割」を持っている助詞である。

A「私【は】田中です」の表現では、「私は」と言った段階で、聞き手は次に続く述部に来る内容に期待し注意を喚起される。

 


ちなみに、単なる自己紹介の場面では、自分を強く前に押し出す意図を感じさせる「私は」をあえて出さないのが日本人的挨拶であろう。

 


一方、
B「私【が】田中です」では、伝えたい最も重要なことは「田中」ではなく「私」です。つまり、この場合の【が】は、【が】の前の主部「私」に聞き手の意識を引きつけ注目させる働きがある。この文は、「田中さんはどの方ですか」と聞かれ「私が(その)田中です」と自分を指差して名乗る場面が想定できる。これはまた単に「私です」と答えることもできる。

 


B
「私【が】田中です」は「田中さんはどの方ですか」への返答と想定できますから、この文を【は】を使った文にすると「<田中>【は】《私》です」となります。すなわち《私》と<田中>の位置が入れ替わって逆になるのです。

 


このように、【は】と【が】は性格が根本的に違います。助詞の種類で言っても【は】は「述部」に係っていく性格の係(かかり)助詞だが、【が】は「主部」との関係を示す格助詞である。


すなわち、

①格助詞【が】はその前に置かれている「主部」に注目させ、係助詞【は】はその後に置かれている「述部」に注目させる。

という違いをまず押さえておく。



①のような
「は」と「が」の性格の違いから、【は】は旧情報を表し【が】は新情報を表す、などの視点が出て来るが、これは①でまとめられた本質的性格の違いから派生した視点に過ぎなく、表面上の違いである。


 

すなわち、物語等に登場人物を紹介する場合などで、「昔々ある

男【が】いた。」のように、まず新しい情報である「ある男」を【が】で受け、次に「その男【は】若かった」のように、すでに読者にとって既知となったその登場人物を【は】で受けて説明する、というパターンの場合、特出する現象である。


 

つまり、主語を紹介的に特立させるときは【が】で受け、その属性や動作を説明するときは【は】で受ける形にするパターンである。

 


しかしながら、この新情報・旧情報の【が】【は】の性格を他の場合に当てはめることには無理が出てくるのである。むしろ、この例では「ある男【が】いた」の【が】はその前の主語「ある男」に注目させ、「その男【は】若かった」の【は】は後の述部「若かった」に注目させる、と解釈したほうが【が】【は】の性格の違いを本質的に説明できるのである。


旧情報を受けるはずの【は】を物語の初めの文で使っている小説は、探せばいくらでもあることを思い起こせば、本質がどこにあるかはすぐに分かるはずである。


 
【が】と【は】には、①に述べた違いに加えてもう一つ重要で基本的な違いがある。

【が】は動作・存在・状況の「主体」を表す。文の構成ではそれを「主語」(広く言うと主部)と呼ぶ。それに対して【は】は「主題」を示す、という違いである。


 
【は】が示す「
主題」とは、話し手が話そうとする話の「テーマ」である。すなわち「私【は】」は「これから私に関して話します」「私について言えば」ということだ。だから、【は】は、意味上であっても、必ずいつも主語を示すとは限らない。


例えば、「この本【は】、きのう買った」という文では「きのう、この本【を】買った」ということだから「この本」は
主語ではなく、直接目的語なのである。

 


【が】【は】の違いを示す「【が】は「
主語」を示し【は】は「主題」(テーマ)を示す」

という本質的違いを先に説明した①とともに確認しておく必要がある。


つまりここでは、【は】は「田中です」という「述部」を引き立たせる役目を持っています。一方、【が】は、「私【が】」と言った段階で聞き手はすでに「主部」に興味を引かれています。つまり【が】は紛れも無い主格の格助詞で、「が」の前に置かれた「
主語」、ここでは「私」を強く意識させます。

 

確認しておくと、【は】がある事柄や物をいくつかの中から「取立て」たり、二つ以上のものを「対比」させたり、すでに知られたことを示す「旧情報」であったりする側面は、上に挙げた本質から出てくる表面上の特徴にすぎない。言わば、①②で指摘した「は」の本質的根本的性格の枝葉にすぎないのである。


そもそも【は】の前に置かれる「
主題」はさりげなく挙げるもので、主役はあくまでも【は】が掛かる「結び」である。すなわち、「私は田中です」の「田中です」の部分に聞き手の意識が来るようになっているのである。


すでに述べたように、自己紹介する場合、「私は田中です」の「私は」はないほうが
日本語の表現らしいし、言ったとしても、控えめに、さりげなく、言うのが日本語である。そこが「主語」に注目させる【が】との大きな違いなのだ。

 

さて、以上述べてきた、【は】と【が】の基本的な性格の違い、を頭に入れながら、冒頭で提示した文例を改めて見てみよう。

A そんなバカなこと【が】ない ×

B そんなバカなこと【は】ない O

 

上の文例A では、「そんなバカなこと【が】ない」の【が】は主格を示しているので、「そんなバカなこと」(主部)が「ない」(述部)という客観的な事実の「現象」を述べただけの表現である。


 

「ない」のは何かと言うと「そんなバカなこと」である、という意味になる。しかし、単に「ない」ものは何か、という文であれば、「それ(バカなこと)【が】ない」と表現するのが自然な日本語である。言わば、「お金【が】ない」と同じ構文である。


ところが「そんなバカなこと」には、話し手の主観「判断」が入っていて、「主格」を示す【が】を使った「客観的な状態を述べる文」には、似合わないのだ。

 

ちなみに、「しかた【が】ない」という表現がある。「仕方(しかた)」すなわち「やり方」「する方法」がない、という客観的状態を述べる表現であるから、【が】の代わりに【が】を使って、「しかた【は】ない」(それを「する方法」について言えば、私の主観からすると「ない」と思う)という表現にはならないのである。

 


一方、

B 「そんなバカなこと【は】ない」の【は】は、話し手の言いたいこと、すなわち文の「テーマ」を示しているので、「そんなこと【については】(どうなのかと言うと)と「述部」に注目させ、「ない 」という「話し手の判断」が入れられる構文になっていて、座りの良い、自然な文になるのである。



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