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(写真は初春のバルセロナ港)
<連載>日本人のための「日本語のエッセンス」 第24章 外国人からよく訊かれる日本語に関する質問 (5)「日曜日まで休みがない」だと、日曜日は休みなのか?
>次の日曜日にやっと休める場合、「土曜日まで休みがない」と言えばいいのでしょうか?それとも「日曜日まで休みがない」と言えばいいのでしょうか?
やまさん、こんにちは。
例えば店に「大晦日まで開いています」とあれば大晦日は開いています。このように肯定文では、動作や状態の継続到達点として「まで」の前に表現されている時間が含まれます。
ところが「…まで~ない」の否定文では、「…になって初めて~する」の意味に捉えられることが多いのです。したがって一般的には「次の日曜日にやっと休める」場合の表現としては「日曜日まで休みがない」が使われることが多いのではないかと思われます。
この否定文での「まで」の解釈(…になって初めて~する)はどうして生まれたのでしょうか?ちょっと考えてみましょう。
「日曜日まで休みがない」は「日曜日(の一日が終わる)まで休みがない」のか「日曜日(の一日が始まる/になる)まで【は】休みがない」(つまり、日曜日が始まった後すぐに休みになる)のか、認識の誤差が生じやすい表現です。誤差が生じるのは、一日が線として捉えられるからです。
この誤差は、点として捉える時間について言う場合はほとんど生じないと言えるほど小さくなります。例えば「5時まで休みがない」は「5時」が点として捉えられているので「休みのない状態は5時ちょうどまで続くが、5時を少しでも過ぎれば(極端に言うと百万分の一秒でも過ぎれば)休みになる」ので「5時から休みになる」と解釈されてもほとんど問題は生じないわけです。
この「点としての時間」から類推されて「日曜日まで休みがない」の認識の誤差が生まれるものと思われます。これは「日」以外の「週、月、年」などの線として捉えられる時間を扱った場合でも生じる現象です。
この誤差は人間の時間に対する基本的な心理傾向から生まれるものですから、他の言語でも同様の問題が起こりうると想像されます。例えばスペイン語のhasta(まで)を使った場合でも" No vendrá hasta mañana "(彼は明日まで来ないだろう)は「彼は明日にならないと来ないだろう」と認識されます。
つまり「彼は明日来るだろう」ということです。
以上を考慮すると、ご質問の事例で「~まで休みがない」を使って誤解の少ない表現を探すと、「日曜日【になる】まで【は】休みがない」と言うか「土曜日【が終わる】まで休みがない」と【 】内を補うことになるでしょうが、「土曜日までずっと仕事がある」か「日曜日にようやく休みがとれる」のように他の表現を使ったほうが、認識の誤差は少ないと思います。
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